第8回 新十条通


 山科についてご紹介していく「山科めぐり」。8回目の今回は、ちょっと趣きを変えて、道路とトンネルのお話です。

 

「十条」は平安京にはない?

▲折上稲荷神社前。後ろに見えている山が稲荷山。稲荷山を越えた先で十条通とつながっている。

 京の都の市街地はその成り立ちから縦横碁盤の目のように作られています。
 東西に走る大きな通りには、北の一条通から南の九条通まであります。 九条通の中央の大門(朱雀大路との交点にある)を「羅生門」と言います(芥川龍之介の著作や黒澤映画でお馴染みですね)。
 あれ? 十条はありませんね。 「十条」は平安京とは関係がなく、近代になって九条の南につくられた道です。
 そして、「新十条通」はさらに最近になってつくられた道路です。

阪神高速の一部として着工

▲新十条通りの東端、外環状線と突き当たる箇所。

  ここ山科は1976年に山科区ができるまで、京都市内でも東山区の一部でした。 後から発展してきたところと言えます。
 阪神高速京都線が東山を超えて山科まで伸びるとき(1995年着工)、ここが新十条通と呼ばれるようになりました。 西は鴨川で十条通と第二京阪につながり、東は椥辻駅前で京都外環状線に突き当たる広い道路となりました。
 東山の下をくぐるトンネルを「稲荷山トンネル」と言い、2007年に開通しました。
▲椥辻駅。開業は1997年。名前が示すとおり、古くから街道どうしの交差点(辻)であった。「椥」はそこに生えていたナギの大木を指す。


空から見た新十条通

▲右側が旧道路、左側が新しく開発された道路。

 2016年の航空写真です(北が上)。下部に左右一直線に伸びている道路が新十条通りです。青色の矢印は旧安祥寺川。

 その25年ほど前、1989年の航空写真です。黄色の円の箇所を比較すれば、この道路はもともとまっすぐではなく、南へ折れ曲がっていたことがわかります。 さらに10年以上前、1978年の航空写真です。赤色の円の箇所を見てもらえば、今は稲荷山のほうにまっすぐ伸びている道が、当初は北へ伸びていたこともわかります。道幅も今よりずっと狭く、旧安祥寺川も整備がされる前です。

2019年、無料開放

▲稲荷山トンネルの入口。背景の稲荷山は、伏見稲荷大社や大石神社のある山。

  当初は高速道路の一部として有料でした。
 しかし、通行量が増えず、周辺道路の渋滞も緩和されないところから2019年に京都府・京都市が買い取り無料開放されました。
 山科と京都市の他の区をつなぐ道路として、 今日では相当量の交通量となり、新たな渋滞も起きているほどです。

 

 



2020年12月25日